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ろう者サッカー日本男子代表 歴史的勝利を挙げるも予選リーグ敗退 ~第23回夏季デフリンピック競技大会サムスン2017
2017年07月26日
7月18日(火)にトルコのサムスンで第23回夏季デフリンピック競技大会が開幕し、サッカー男子は16チームによる予選リーグから大会がスタートしました。
デフリンピックとは、聴覚障がい者による4年に1度のスポーツの祭典。1924年に第1回大会がフランスで開催され、ろう者サッカー男子日本代表は今大会が4回目の出場となりました。日本は過去、予選突破はもちろん、勝利したこともありません。ウクライナ、アルゼンチン、イタリアと予選リーグで同組となり、厳しい戦いになることが予測されていました。
7月19日(水)、初戦の対戦相手であるウクライナは、前大会の準優勝国です。ボール支配率でも圧倒されるなか、古島啓太選手のFKで先制しました。後半早々に同点とされるも、終了間際に吉野勇樹選手のゴールで逆転し、ろう者サッカー日本代表はデフリンピック初勝利を収めました。
日本 2-1 ウクライナ
21日(金)の予選リーグ第2戦はアルゼンチン戦。個人技を活かしたサッカースタイルで、昨年の世界選手権4位の強豪国です。立ち上がりから押し込まれる展開で、前半で2点を先制されます。しかし、後半に吉野選手のゴールで1点を返すと、終了間際に古島選手が倒されてPKを獲得。これを西大輔選手が決めて、引き分けとなりました。
日本 2-2 アルゼンチン
24日(月)に行われた予選リーグ最終戦。相手は昨年の世界選手権で2-5と大敗しているイタリアです。前半、林滉大選手と古島選手の得点で2点を先制しましたが、イタリアに1点を返され、2-1で折り返します。後半は一進一退の攻防が繰り広げられるも、終盤に1点を返され同点になり、さらにはアディショナルタイムにも追加点を入れられてしまい、敗戦となりました。
日本 2-3 イタリア
他会場でウクライナが3-0でアルゼンチンに勝利したことにより、日本の予選リーグ突破はなりませんでした。トルコ在住の日本人の方々、他種目の選手団、そして日本からのサポーターと、多くの方々が会場に駆けつけました。また日本からもSNSなどを通じて様々な方々から応援メッセージがチームに届きました。どの試合も拮抗した内容となり、4年後のデフリンピックの予選突破、そしてメダル獲得に向け意義ある大会となりました。
大会は、7月30日(日)に閉幕します。
監督・コーチ・選手コメント
中山剛 監督
これまでの2005年、2009年、2013年大会を考えても、ろう者サッカー日本代表がデフリンピックで1勝する、予選リーグを突破するというのは、世界デフサッカーのなかでは想像できないことでした。各国との監督会では、我々のグループはウクライナが間違いなく1位通過、2位をアルゼンチンかイタリアが争って日本は勝ち点0で敗退と全員が予想。大変なリーグに入ったので勝ち点1でも取れれば頑張ったと思うよと、声を掛けられました。
大会前に出来る準備は全てやり切りましたので、不思議と気持ちも落ち着き、初戦を迎えました。ウクライナには、気持ち、コンディションともに120%の状態で挑み、チームで戦い、組織で戦い、全てを出し切って全員で勝利をつかみ取りました。2戦目のアルゼンチン戦は0-2から執念で2-2に追いつき、4チーム全てが決勝ラウンド進出の可能性を残したままでの最終戦は、1年前に2-5と完膚なきまでに叩かれたイタリアと対戦。立ち上がりから相手を圧倒し、3試合でも最も多くチャンスを作って攻撃しましたが、最後の最後で勝利の神様は微笑んでくれませんでした。
勝たせることができなかったのは、全て監督である僕の責任です。宿舎に戻って試合のビデオを見返すと、終了間際のショートコーナーからの失点は1993年のドーハの悲劇を思い出させ、アディショナルタイムの失点で2006年のドイツワールドカップでのオーストラリア戦を思い出しました。不謹慎かもしれませんが、悲しいとか悔しいよりも、監督に就任した4年前と比べて、よくここまで選手とチームが成長し世界と戦えるようになったという嬉しさが込み上げ、涙が止まりませんでした。
大会を支えてくださった協会スタッフ、選手のコンディションをいい状態に保ち続けてサポートしてくださった佐保トレーナーがいたから同じ土俵で戦えました。今大会でできたレベルを最低ラインと考え、結果は『サムスンの悲劇』として忘れずに、次につなげてほしいと強く思います。結果だけ見れば、チームは落ち込んで下を向いていると思われる方がほとんどだと思いますが、ここまで戦った選手、4年前から一緒に戦ってきた仲間を本当に誇りに思います。胸を張って帰国しますので、全員を讃えてください。
次にバトンを渡す時がやってきました。今まで応援してくださった皆様と支えてくれた家族には感謝の気持ちでいっぱいです。これで4年間の旅を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。
植松隼人 コーチ
中1日の連戦のなか、1勝1敗1分で惜しくも得失点差で予選敗退となりました。結果が全てですが、3戦ともに全力で戦ったことを誇りに思い、選手たちを讃えたいです。監督から選手たちに伝えたことですが、結束とはひとつの束になって戦うんだというメッセージが表れた試合だったと感じています。世界の壁は徐々に越えられつつあり、4年後のデフリンピックでは必ず使命を果たせるよう、我々スタッフもろう者サッカーのさらなる発展を考えていきます。ホームページやFacebook、twitterなどを通じて、たくさんの声援と激励を受けていることは選手たちにも伝わっていました。この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。これからも、ろう者サッカーをご支援のほどよろしくお願いします。
古島啓太 選手
予選突破を目標にし、一戦一戦集中してチーム全員で闘うことを意識していました。ウクライナ戦ではデフリンピック日本サッカー史上初のリーグ戦勝利を果たし、アルゼンチン戦は0-2の苦しい状況から引き分けに持ち込めたもの、最後のイタリア戦で敗戦し、得失点差でグループリーグ敗退となってしまいました。これまで多大な応援を送っていただいたにも関わらず、期待に応えることができずに申し訳なく、悔しい気持ちでいっぱいです。その反面、多くの方々から応援をいただき、本当に感謝しています。皆さんの声援がパワーとなり世界の強豪を苦しませ、日本サッカーも強くなったと感じられた大会でした。ただ、世界ではいいサッカーをするよりも勝つサッカーでないと、予選突破はできません。4年後のデフリンピックに向けて何をすべきかを各選手が見つめ直し、それぞれの道でスキルを上げ、さらなる成長に結びつけるよう、引き続き頑張っていきます。応援いただき、誠にありがとうございました。
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