2020.01.09
第98回全国高等学校サッカー選手権大会が2019年12月30日(月)に開幕し、連日熱戦が繰り広げられている。ここではピッチサイドで試合を応援する方々にスポットライトを当て、ピッチ上に秘められたストーリーをお届けする。
2回戦 2020年1月2日(木)/味の素フィールド西が丘
山形中央 0-2(前半0-1、後半0-1)今治東
愛媛県代表の今治東中等教育学校は、第98回全国高等学校サッカー選手権大会で選手権初出場を果たした。同校は公立の中高一貫校。高校から編入してくる生徒もいるが、今回のメンバーには中学から同校に在籍する選手が多くいる。
初出場ということもあり、初戦の山形中央高校戦には在校生、保護者、卒業生など多くの方が応援に駆けつけた。昨年度卒業したサッカー部OBの伊藤貴志さん(写真左)と三谷海心さんは、特別な思いを抱えながら後輩たちの晴れ舞台を見届けた。
2人は小学生時代から同じチームでボールを蹴り、ともに今治東中学に進学した。高校2年時の2017年度には愛媛県予選で決勝進出と、選手権まであと一歩までこぎつけたが、1点を先取しながら2点を奪われ逆転負け。ベンチ入りしていた伊藤さんは「ものすごく悔しくて、試合後にめちゃくちゃ泣いた」と当時を振り返る。
3年になると伊藤さんはキャプテンに就任し、三谷さんも主力選手として全国大会出場を目指した。しかし全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)でも県予選決勝で逆転負けを喫し、伊藤さんは選手権予選を前に引退。三谷さんは大学受験のため初戦を欠場したが、チームはまさかの初戦敗退を喫し、不本意な形で高校サッカーにピリオドが打たれた。
全国不出場の歴史は今年、後輩たちが打ち破った。2人は県予選決勝を現地で見届け、「一緒にやってきた後輩たちが選手権に出てくれるのがうれしかった」(三谷さん)と勝利を喜んだ。
迎えた全国の初舞台でも、2人はスタンドに並んで座り、後輩たちを見守った。キャプテンの大谷一真や右サイドバックの川口留加は2人と同様、中学から同校に在籍している。長い付き合いがあるだけに思い入れも強い。
今治東は委縮することなくプレーし、2-0で勝利を飾った。伊藤さんが「どれだけ点を取ってくれるか楽しみ」と期待を寄せた2年生FW髙瀨太聖が2ゴールを挙げる活躍を見せた。試合後にはスタンドから後輩たちに声を掛け、喜びを分かち合った。
試合前は「うらやましいとか、悔しいな、という気持ちもある」と語っていた2人だが、試合後は「めちゃめちゃよかった」「『おめでとう』と素直に言いたい」と頬を緩めた。
その胸に去来したのは喜びの感情だけではない。「自分たちも負けていられない」。後輩たちから刺激を受け、大学でサッカーを続ける2人は決意を新たにした。
大会期間:2019/12/30(月)~2020/1/13(月・祝)