2021.01.11
第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は1月10日(日)に決勝が行われ、藤枝順心高校(東海2/静岡) が2年連続5度目の優勝を果たしました。
岡山県作陽高校 0-3(前半0-0、後半0-3)藤枝順心高校
試合は序盤から連覇を狙う藤枝順心が前線からの力強いプレッシングを押し出します。相手に素早く詰め寄り、ボールを奪う場面もたびたび見られました。3大会ぶりの決勝を戦う岡山県作陽高校(中国1/岡山)は、自陣からビルドアップするサッカーを貫こうとします。藤枝順心のプレスに苦しむものの、伊勢さつき選手が自ら相手を1人はがして前を向こうとするなどして対抗。21分には連続してCKを奪い、これはファーサイドでわずかに合わなかったものの、あと少しで得点になりそうな場面を見せました。
藤枝順心もセットプレーで惜しいシーンがありました。ニアサイドで合わせた28分のCKでは、斉藤花菜選手のヘディングシュートが相手DFに頭で弾かれ、クロスバーをたたきました。その4分後には堀内意選手が蹴った左CKが直接クロスバーをたたくなど、作陽のゴールを脅かします。
試合が動いたのは後半開始直後。藤枝順心が開始1分で奪ったCKで、キッカーの堀内選手はショートCKでリターンパスを受けてからクロス。変化を加えたCKから、窓岩日菜選手がゴールネットを揺らしました。
先制点が藤枝順心の勢いを強めます。52分にはロングパスがつながり、ペナルティエリア内で競り勝った斉藤花菜選手がねじ込んで追加点。63分には、最終ラインの井手ひなた選手がハーフウェーライン付近でのパスカットから直接左サイドへロングボールを送ります。これに途中出場の高尾真莉奈選手が反応し、対峙したDFの裏を突いてシュートを放つと、ファーサイドに見事なゴールが決まりました。
作陽は選手とシステムの変更で流れを取り戻そうと奮闘します。73分には左サイドバックに移った本多実夏子選手が長い距離をドリブルで運んで連続シュート。85分には1トップとなってボールを呼び込んでいた井手段祐有選手が鋭い反転からシュートを放ちますが、ファーサイドへの一撃はゴールポストを強烈にたたくもゴールには至りませんでした。
その一番の危険なシーンも乗り切った藤枝順心が、ゴールを許さないままタイムアップ。同校初の大会連覇、また今回と同じ決勝カードとなった3年前の第26回大会と同様、大会無失点で頂点に輝くという偉業を成し遂げました。
多々良和之 監督(藤枝順心高校)
大会前には、連覇できるだろうかという気持ちもありましたが、選手たちが1試合ごと、大会を通しても成長してくれました。東海大会で常葉大学附属橘さんに負けて迷いが出ましたが、もう一度原点に戻り、今年の武器であるハイプレスとカウンタープレスで戦おうと選手たちに話しました。それがうまくはまったと思います。過去の優勝した代と比べて、個のレベルでは及ばないかもしれませんが、チームとしてやることを徹底したことが優勝につながったと思います。3連覇は難しいことですが、選手たちにとってはやりがいあることだと思うので、ぜひ来季の目標の一つにしたいと思います。
柳瀬楓菜 選手(藤枝順心高校)
藤枝順心が成し遂げられていなかった連覇達成をすごくうれしく思います。完璧な優勝にしようと、大会無失点への意識もすごくありました。今年は新型コロナウイルスの影響でなかなか思うようにいかない時期もありましたが、しっかりチームとコミュニケーションを取ることを大切にして、試合中も学年に関係なく声を出すということを意識してやってきました。今日の試合でも声が出ていて、チームが一丸となっていると感じました。藤枝順心の伝統は進化することです。後輩たちにも、進化し続けるチームであってほしいと思います。
池田浩子 監督(岡山県作陽高校)
1試合目からギリギリの戦いでしたが、勢いに乗って決勝まで来ることができました。ハーフタイムにマークの確認の徹底などを話していたのですが、後半立ち上がりのCKでのトリックプレーを決められ、それまで我慢していた部分が切れてしまったかなと思います。最後は実力の差を見せつけられて悔しさもありますが、しっかり受け入れて、また次の代の選手たちが成長する糧にしてくれればなと思います。コロナ禍であっても、例年に比べて何か欠けた状態でこの大会を迎えたわけではなく、選手たちはこれまでにないくらい頑張ってくれて、私は自信を持ってこの大会に臨めました。選手たちをしっかりと評価してあげたいと思います。
岡本亜子 選手(岡山県作陽高校)
相手は何度も優勝しているチームなので、絶対に厳しい戦いになるし、前半のように押し込まれた状況になることは予想していました。それでも練習してきたサッカーをすることを目標に、ビルドアップするという共通意識を持ってプレーしましたが、苦しい時間が長くなりました。私たちの代は3年間、1回戦を勝ち抜くこともほとんどありませんでした。今大会を通じて、勝つたびに絆が深まっていく仲間との結束力などを学びました。準優勝という結果には満足できませんが、ここまでの過程を思い返すと、やり切って良かったという気持ちがあります。諦めない気持ちや積み上げたことを信じて戦うという作陽らしさを受け継いで、来年は優勝を目指して頑張ってほしいです。
大会期間:2021年1月3日(日)~2021年1月10日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)